わたしは夜に虚実を見る。夜は夜であり、そこには巨視的な万物のおおむねを握る法則に縛られている、そんなものに。宇宙は嘘をつかない。ただし真実を告げることもない。けれどわたしはそんなものに嘘を見出す。嘘。誰に対して?なにに対して?嘘であるとしても、わたしは騙されているわけではない。かといって真実を見ているわけでもない。見えないものを見ようとして望遠鏡を担ぐ体力も持ち合わせが無い。ただ嘘を見ている。望遠鏡で遠くのものをのぞきこんでいるようなものだ。遠くが見える。けれど見ているものは狭い。なにかを見ようとして、視野を減らして視座を失う。それでも遠くを見落としたければそうするよりない。遠くを見通すか、近くを見渡すか。わたしは目を細める。遠くを見ようとする。遠くにあるものが見える。それは目を細めている。わたしを見通そうとしている。