学生向けのワンルーム。ベッドの上、僕は壁にもたれている。彼女は僕の胸に背中を押し当てる姿勢でもたれている。「おもたい」僕は言う。「当然、なぜならばわたしがもたれている」「どいてという意思表示と受け取ってほしいのだけれど」「彼女に遠ざかれと?」「体格が良いのも問題だ」「このグラビア体型に向かってなんという表現を」「善し悪しだよ。で、僕の意思表示についての返事は?」「いや」さらにもたれてくる。普段は好ましい彼女の匂い。けれど濃密さは限度を超えると評価が反転する。「んふふー」「なんで笑っているの」「君がいやそうにしている顔、大好き」「お父さんお母さんから、人がやってほしいと思うだろうことをしなさいって教わらなかった?」「人の嫌がることをしなさいと教わった」「これは勝負ごとじゃない」「いいえ。わたしがさらに君を落とす勝負をしかけているの」「………………」「おお、効果あり」「そうかもしれない。けれど」「けれど?」「効果を発揮する対象たる僕が女性という前提を無視している」「だからこそわたしはこうしているの」彼女の笑みが凶悪さを帯びる。僕の顎を指でつまむ。唇を近づけてくる。