無人島。スマートフォンで位置ソーシャルゲームを起動。周囲数十キロは無人という表示結果。彼女は両腕を真上にあげる。「やったぜ。社会とか人目から解放された」「どっちも同じ。そしてピンチ」「ネットワークが届くピンチはピンチじゃない」「当面のピンチ」「あ、言い直した。それでは君の所感を言いたまえよ」「お腹が空いた」「ストレートな生存の危機だ」「あとはトイレも」「女性存在における尊厳に対する不安だ」「あ、足下にアサリみたいな貝がたくさん」「これでわたしたちは生きてゆける」「塩分とタンパク源はいいとして、火がないよ」「あなたの眼鏡がある」「レンズで火をおこすの?」「でなければ魔法で」「できるの?」「破ァ!」足下の流木に火がつく。「すごい」「そしてここに流れ着いたとおぼしきボウルが」「食器に使えそうだね」「え、トイレじゃなくて?」「ここにしてどうするの」「わたしが愛でるの」僕はアサリ(推測)をボウルに放りこむ。火にかける。「無視しないで! わたしは本気なの!」煮えた貝が口を開ける。彼女はわめき続けている。