近所の工場に首から下だけの肉体が整然と並んでいる。胸部には張り紙があり、コンビニだったりホームセンターだったりラーメン屋だったりの宛先が焼き印されている。工場長は自分の首を取り外して、並んだ肉体のひとつに接続する。コンビニ店員になり、ホームセンターの植物コーナーのエキスパートになり、創作ラーメンの発明者になり、そして最後に首を工場長の肉体に戻す。はずだった。違う肉体だった。いつの間にか誰かがすり替えたらしい。この肉体は誰だ。工場長は誰になった/なってしまったのか——そう考える前に、肉体から工場長の頭脳へ『誰』が這い上がってくる。工場長は誰かになってしまう恐怖に悲鳴を上げる。悲鳴が数秒続き、いきなり消える。悲鳴の代わりに伸びやかなバリトンボイスで資本主義の工業化を讃える歌劇の一幕を歌い始める。