日課で散歩する遊歩道のなにもかもがねじれた。わたしが一歩歩くと過去になり、もう一歩歩くと未来になった。アスファルトは土になり、戦時の爆撃を思わせるクレーターがむきだしになった。わたしはいつものように遊歩道を散歩する。変化のめまぐるしさに息が切れる。めまいがする。10メートル先/目の前/手を引かれる子ども、そして手を引く後ろ姿。いつか、どこか、見たことがなくても知っているような——はっとなる。子どもはわたしだった。はっとなる。手を引く祖母はこのあとに機銃掃射で命を落とした。2人の後ろ姿は変わらない。わたしはそこに向けて歩みを進めてゆく。かすかに戦闘機のエンジン音が聞こえる。足が勝手に動く。過去のわたしと祖母の後ろ姿にぶつかる。ぶつかった。なにが起こったのだろう。右手を握られる感覚にはっとなる。右下を向く。子ども=かつてのわたしが見上げている。「おばあちゃん、どうしたの?」/年老いたと思えない力が肉体に生じた。わたし/祖母は素早く子ども=かつてのわたしを抱きかかえる。鮮明な記憶として残っている機銃掃射の軌跡と反対方向へと地面を蹴り、石畳へと倒れ込む。靴のつま先を銃弾がかすめる。戦闘機が飛び去ってゆく。わたし=祖母/わたし=かつてのわたしは抱き合ったまま、しばらくのあいだ地面に身体を横たえたままでいる。