寝る前に飲んだ牛乳が胃の中でふくらんでいる。膨満感にわたしはベッドのなかで身をよじる。息をする。喉の奥から乳牛の鳴き声がする。牛乳からなる真っ白な牛が、胃袋から食道を、それこそ牛の歩みでさかのぼってくる。喉を通り過ぎるときにおえっとなる。口のなかに牛たちが集まる。舌の上で牧童たちが牛の世話を始める。しばらくすると、舌先にミルクタンクの金属のひんやりした感覚が広がる。口のなかから牛乳が出荷されてゆく。出荷された牛乳は紙パックに注がれ、キッチンの冷蔵庫に戻されてゆく。