道を歩いていると、地面が沈みこむ。地盤沈下かと疑う。屈みこんで地面に触れる。アスファルトが毛布を思わせる柔らかさになっている。そうしているあいだにも、地面は沈み続ける。上を向くと、かつての地面ははるか頭上に遠ざかってゆく。地球の中心へ向かうのだろうか。そうしたら、高熱のマグマで死んでしまうのではないだろうか。とぼしい科学知識をかき集めるも、わたしにできることはない。どこまでも沈んでゆく。周囲の気温は上がるどころか下がる一方だった。わたしはどこに向かっているのだろう。 どこまでも落ちてゆく。そして足下が薄くなってゆくのを感じる。あれ、もしかして地球の反対側へ到達してしまったのだろうか。落ちて、落ちた。わたしは背中からふんわりしたタオルのうえに落下した。わたしは口を開く。赤子の泣き声が分娩室に響き渡る。