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方向への感心と問い
道ばたに座って、ゆきかう人を斜め下から見上げる。誰もが自分の行き先をわかっているように見える。なんと素晴らしいことなのだろうと感心する。そして、自分はそこに加わりたいのか?という問いが生じる。わたしは首をかしげる。うなずけるような、そうでもないような。うーん。素晴らしいことなのに、どうしてだろう。やってみればわかるかもしれない。わたしは立ち上がり、お尻についた汚れを手で払う。わたしは目的もないままに行き交う人の流れに加わる。歩いているうちに、なにかが見えてきたような気持ちになってゆく。わたしは早足に歩いてゆく。少し前にわたしが座っていた場所へ、入れ替わりに腰を降ろす。斜め下から届く視線はある種の感心であり、それが徐々に懐疑の眼差しへ変わっていった。