生存証明書の発行を依頼するため、わたしは隣町の国境に向かう。国境には審問官が複数在籍しており、国境を越えて行き来する人は裁いたり裁かなかったりしている。わたしはそんな風景を眺め、それから国教警備署に併設された役所に向かう。役所内は混み合っており、国境侵犯について、武力を用いるべきかの議論がなされている。わたしは役人に声をかけると、その男性は真っ黒なフードと赤いローブを慌てて身につけ、威厳に満ちた声で用件を尋ねてくる。どうやら審問官らしい。ちょっと緊張しつつも、わたしは生存証明書の発行を申請する。どこで?と審問官が問いかけてくる。この国で?あるいは国境を越えた先での生存か?わたしは自分の所属する街を愛しており、外での生存は考えていないと答える。審問官は満足したようにうなずき、真っ赤に焼けた鉄ごてを取り出し、わたしの手のひらに押し当てる。熱い。しかし痛くはないし、悲鳴も出ない。審問官の笑みがより強調される。外を意識した人間は、数百度の熱を感じるが、この街の人間は熱めのお風呂程度にしか感じないと言う。つまり、わたしがこの町に住まう子羊だとわかったことによる笑みなのだ。わたしは審問官の意識がそれた瞬間を狙い、鉄ごてをひったくる。そして審問官の手の甲に押し当てる。ラム肉の焼ける匂いと油がしたたる。審問官の口からこれまで聞いたこともないような悲鳴が飛び出す。周りの役人——審問官は宿敵を見つけたとばかりに悲鳴を上げ続ける男にむらがり、人体のありとあらゆる箇所に真っ赤な鉄ごてを押し当ててゆく。