ポッドキャストのトーク番組がよく途切れてしまう。そのたびにわたしは舌打ちして、ブラウザをリロードする。スピーカーから流れてきた声にはっとなる。さっきまでは男性の声だったのに。放送局のラジオと違って、次の番組なんてものはないはずなのに。それとも同じ番組で、ただしゃべっている人が変わっただけなのか?ハッシュタグをつけてツイート。同じ内容のツイートがいくつも増える。わたしだけの錯覚じゃなかったのか。急に無音になる。スピーカーがほのかなノイズを垂れ流す。「やっぱりおかしいんだよね」「だって、ツイートの内容がわたしたちが話している内容と関係ないことばかりだったし」「ええと……聞いてくれている人、誰ですか?」「わたしたちがおかしいんですか?」違うとツイートする。「ああよかった!」「や、よくないよ。変だってことがわかっただけじゃん」それでも前進は前進。「ポジティブさんだー」「でも、なんでこんなことになったんだろうね?」「もしかして、えっと世界が分岐する、えっと、パラ、パラソル」パラレルワールド。「それそれ!」「ねえ、リスナーさんのいるところではなにが起こってるんですか?」「どんなところですか?」わたしのいるところは日本で、別にどうということは。クロレンス王国の騎士で、神託の箱から聞いている。「……え?」第78惑星の生体音声箱から聞いている。「ファンタジー?」「SF?」「最初の人はわたしたちが住んでるトコと似てるみたいだけど」「ていうか、みんなツイートしてるわけじゃないの?」石版に書きこんでいる。テキストを確率変動量子転送している。「……世の中いろいろだね!」「そうだよ(便乗)」「って、そろそろ時間だ」「ええと、今回?の放送はおしまいです」「それではまた来週——や、違うか」「また、会えたら聞いてください」声が途切れる。ブラウザが強制終了する。慌てて再起動すると、ブラウザに残っていたキャッシュは1つ残らず消えている。ポッドキャストにつなぎ直す。いつもの、耳慣れた男性のトークが続いている。くたくたになって家に戻ってきたときみたいなため息が出そうになる。「いやー、俺たちのトークを聞いてたの、誰だったんだろうな?」息が、詰まる。