地平線しか見えない草原にガチャマシンがあるのを見つける。貧乏旅行中の女性がポケットというポケットを探り1枚の硬貨を見つける。どこの国かはわからない硬貨をガチャマシンにセットする。プラスティックの筐体に異国の文字が浮かぶ。それで硬貨の来歴/一五年前の旅行先をを思い出す。ハンドルを握り、回す。そのときなにかに祈る。祈りの内容は自分でも言葉にならない。それでも出てくるもののために祈ってしまう。カプセルが吐き出され、地面に転がる。拾い上げ、開ける。中から飛び出した突風によって女性は真後ろにすっ飛ばされる。尻もちの痛みに涙目になりつつも立ち上がる。地平線が消えている。見渡す限りの視界すべてに都市が広がっている。女性は草原の来歴を思い出す。かつてあった帝国、かつてあった首都。今はすべて草と消えた。消えたはずだった。なのに目の前にある。串に刺して炙られた羊と香辛料の匂いがここまでやってくる。ふらついた足取りで都市へと進んでゆく。時間の逆回しを連想/地面に転がったガチャカプセルがマシンに吸いこまれてゆく。遺跡が消える。地平線が残る。ガチャマシンだけが残る。